数日後、紅葉はナオに誘われて、最近オープンしたばかりのパフェ専門店にやってきた。店内は鮮やかなインテリアと、甘いフルーツやチョコレートの香りが漂っており、思わず笑顔になるような空間だった。外の木々が窓から見える風景は、秋の色に染まっていて、ちょうどいい季節感を感じさせていた。
「すごいね、ここ。こんなにたくさんの種類のパフェがあるなんて!」紅葉はメニューを見ながら、目を輝かせた。
「うん、ずっと来てみたかったんだ。」ナオも嬉しそうに、メニューを開いている。二人とも、どれにしようか迷いながらも楽しそうだった。
やっとそれぞれが選んだパフェがテーブルに運ばれてきた時、紅葉は目の前に置かれた色鮮やかなフルーツパフェに大興奮していた。ナオは少しシンプルなチョコレートパフェを選んでいたが、そのシックなデザインに彼女の落ち着いた雰囲気がぴったりだった。
「ねえ、紅葉。」ナオがパフェを一口食べた後、少し照れくさそうに話を切り出した。
「ん?」紅葉は口いっぱいにパフェを頬張りながら、ナオの方を見た。
「こないだ、クィルアンカで見かけた瑞輝さんって、どう思う?」ナオの言葉に、紅葉は一瞬驚き、スプーンを止めた。ナオの顔が少し赤くなっているのを見て、紅葉はすぐにピンときた。
「瑞輝さんって、あのカフェで働いてる店員さんのこと?」紅葉は微笑みながら尋ねた。
ナオは頷いて、恥ずかしそうに顔を伏せた。「うん…実は、彼にちょっと興味があって…でも、どうすればいいか分からなくて。」
紅葉は笑いをこらえながらも、ナオの初々しい様子に心が温かくなった。今までナオは自分の殻に閉じこもっていたようなところがあったのに、今こうして恋の相談をしてくれるなんて、彼女も新たな一歩を踏み出しているんだと感じた。
「瑞輝さんか…誠実そうで、優しそうな人だよね。」紅葉は、少し考えながらそう答えた。実際、瑞輝はいつも穏やかで、客にも店員にも分け隔てなく接する姿が印象的だった。
「そうなんだよね。それに、いつも落ち着いてて、話しやすい感じがするんだ。」ナオは少し嬉しそうに続けた。紅葉はそんなナオの姿を見て、彼女が瑞輝に対して本当に好意を抱いていることを確信した。
「でも…私、今まで誰かに好きになったことなんて、あんまりなくて。どうやって話しかけたらいいかも、よくわからないんだ。」ナオは困ったように言った。
紅葉はパフェを一口食べて、少し考え込むように首をかしげた。「うーん、そうだなあ。まずは、いつも通りに話してみるのがいいんじゃない?ナオは自然体で接すれば、瑞輝さんもきっとリラックスしてくれると思うよ。」
ナオは頷きながらも、少し不安そうな表情を浮かべていた。「私、瑞輝さんの前だとちょっと緊張しちゃうんだよね。うまく言葉が出てこないし、ついぎこちなくなっちゃうの。」
「でも、それがナオのいいところなんじゃない?」紅葉は優しく微笑んだ。「自然体のナオが一番魅力的だと思うよ。きっと瑞輝さんも、ナオのそういうところに気づいてるんじゃないかな。」
その言葉に、ナオの表情が少し和らいだ。「そうかな…。少し勇気が出てきた気がする。」
「大丈夫だよ。もし何かあったら、いつでも相談して。」紅葉はそう言ってナオに微笑んだ。
ナオはふとパフェに目を落とし、照れ笑いを浮かべながら、「実は、パフェのお店に誘ったのも、瑞輝さんのことを相談したかったからなんだ。」と、正直に打ち明けた。
「そうだったんだ!」紅葉は驚きながらも、笑いが込み上げてきた。「それなら最初からそう言ってくれれば良かったのに!」
二人は大笑いしながら、パフェを楽しんだ。そのひとときは、甘くて温かく、何よりも楽しかった。ナオが少しずつ自分の感情を素直に表現できるようになっていることが、紅葉にとっても嬉しかった。
ナオが瑞輝に思いを寄せる姿を見て、紅葉もまた、新しい気持ちが芽生えていくことを感じていた。それは、かつて自分が感じていた重たいものとは違い、希望や未来への小さな期待が織り交ざった感情だった。
「じゃあ、次は瑞輝さんにどうやって話しかけるか、作戦を立てなきゃね!」紅葉は冗談めかして言った。
「そうだね!紅葉、手伝ってくれる?」ナオが楽しそうに言い、二人は笑顔でその作戦について話し始めた。
甘くて少し照れくさい恋の話が、二人の友情をさらに深めていった。